崩壊する介護現場 読了

崩壊する介護現場(KKベストセラーズ、中村淳彦、2013)」を読んだ。

もともと現代ビジネスにあった記事を読んで著者の著書を読んでみようと思った。

内容としては、下記にまとめてみた。

・施設の高齢者が虐待受けている件数が増えていて、マスコミ報道も増えていること。

介護保険制度が2000年に導入されてから、人材の劣化が大きくなっていること。

・風俗が介護職員の賃金的なセイフティーネットになっていること。

・福祉ではなくビジネスとて参入した企業が利益優先で現場が荒れていること。

 

まず、介護保険制度が始まるまでは、介護は福祉の一部で、身体障碍、児童福祉などと同じカテゴリーだった。その時代は、介護は行政が必要な人に対して行うサービス(措置)で、職員の給与も税金で賄われ公務員と同じような待遇だった。大学や専門学校でも、この学校は介護、この学校は児童福祉など特色があって独自の教育をしていた。その教育を受けた世代などは、真剣に介護福祉のことを考えていたし、勉強もしていた。

 

で、その後、高齢化社会で財政的に厳しいということで介護福祉士などの資格が整備され、介護保険制度もできると、学校は単に資格取得を目的とした教育になり、介護事業も民間に開放されると、様々な人、企業が参入してきた。

需要と供給の関係から、介護職員は慢性的な人材不足で、どのような人でも、現場を回す必要から採用することになった。それで現場の人間関係は荒れてまくった。

行政や国は失業対策として、「誰でもできる仕事」とし人材を大量に送り込んだ。

さらに、企業は利益を優先するために、職員を少なくして運営するなどもしている。

その結果、措置時代の優秀な介護人材や、真剣に介護をしたいと思う人は、嫌気がさしていなくなった。

 

 

マスコミがよく言う低賃金だから人が集まらないというのも、一理あるが、それよりも職場の人間関係が重要だと思う。

この本には「公益財団法人 介護労働安定センター 平成23年の介護労働実態調査」が載っているが、ホームページにある平成29年のものによると、「9前職の介護職を辞めた理由 」で、「職場の人間関係に問題があったため」が20.0%で一番多い。その次が「結婚・出産・妊娠・育児のため」18.3%、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」16.3%など続く。

 

人間関係の問題が一番にあるというのは福祉の現場としては異常だと思う。現場がギスギスしていて、入居者、利用者に福祉なんでできない。

行政も研修をしているようだけど、こういったメンタルヘルス系の研修は無いと思う。調査で結果が出ているのにやらないのはおかしい。パワハラの相談窓口があるようだけど、対策としては全然不足している。

 

あと、本にはサイコパスな人が出てくる。その人は雄弁だが嘘が多く、他人を巻き込み様々な問題を起こす。その人の周りは職員が辞めていく。嫌っている人もいる。一方で上司にはよく思われている。

本の著者は、この件でストーカーに付け狙われ、家族が犠牲になり、

事業所も結果的に閉鎖することになったと書いてある。

パーソナリティ障害の関係も書いてあるが…。

一人このような人がいると、周囲の多くの人が離職したりして迷惑を受け、事業全体にも影響する。

 

私も介護の経験が外輪部だけど少しある。

誰でもできる仕事というのはウソだと思う。人を選ぶ職業だと思う。なのに失業対策とかで大量の人を送り込んだのは間違いだと思う。

 

少し極端な表現化もしれないが、介護保険制度は事実上崩壊していのではないかと。

今のうちに立て直しておく必要が絶対ある。