児童青年精神医学とその近接領域
「自閉症スペクトラム障害の認知発達的研究」─記憶の発達と“心的タイムトラベル”─
を読んで考えたこと。
興味を引いたものを大雑把に箇条書き。
- ASD(自閉症スペクトラム)の人たちには、エピソード記憶あるいは自伝的記憶に特異性がある。
- エピソード記憶に特徴的な自己関連づけ効果が高機能自閉症の人たちには表れない。
→自己関連付け効果とは自分に関係がある出来事がそれ以外よりもよく記憶すること。
→ASDの人たちでは、情報を自分に準拠させて取り込むエピソード記憶の性質がみられない。
→自分自身の体験として語られるエピソード記憶が定型発達者に比べて極めて少ない。
-
タイムスリップが書かれていたが杉山先生の本の記載の方が分かりやすいので書いておく。タイムスリップ現象:ASDのフラッシュバック。昔のことを突然想起し、あたかもつい先ほどのように扱う現象。PTSDのとは違うらしい(「発達障害の薬物療法」,杉山登志郎))
- 今ここにいる自分の過去を体験したという記憶の意識が、通常よりも希薄。
- ASDの人たちが示すこだわりの根源には、今ここにない事態を見通すことの困難があると想定する。
- 現時点の自分に限られた行動様式や思考様式が発現しているのではないかという仮説がある。
- タイムスリップにみられる記憶の混乱やエピソード記憶の減退は、脈絡をもって過去と現在をつなぎ、自分の時間軸上での相対化する自己体験の意識を減弱や異常にあるのではないかと考えられる。また、自己体験の意識が過去と未来方向へ自在に拡張子して、現在の自己と連続していることをいう。
- 未来事象については、(未来の)仮想的な自己体験の意識はエピソード的未来志向とよばれ、過去経験と自己体験が関連している。
などなど。
エピソード記憶の話が出てきて、そういえばすんごい前に聞いた、前野先生の受動意識仮説を思い出した。
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科における講義「システム生命論」
人間の「意識」は、人間全体の司令塔ではなく、単にエピソード記録をする為の記録係にすぎないとする説。
とすると、ASDの人たちの意識は、自己に関連付けができにくいということ????
この辺、いろいろ考えられるかもしれないと思った。