組織の思考が止まるとき ‐「法令遵守」から「ルールの創造」へ

郷原 信郎氏の『組織の思考が止まるとき ‐「法令遵守」から「ルールの創造」へ』を図書館から貸りて読んだ。



P,95-97で、
法令や規則をただ守るだけの法令遵守を守ろうとすると、
・そしきの中で、基準、規則、マニュアルを作ろうとする。
・規則などは、『想定の範囲内』で整えられる。

・今の世の中は、複雑・多様化で、変化が激しいので、『想定の範囲内』を超える問題も起きてくる。
・想定の範囲以外で起きた問題は、基本や根本に戻って考える必要がある。このあたりは、責任のある人間(組織の意思決定をする人)が決断をする必要がある。

・しかし、組織の意思決定が上手くできないと、(現場の人間が)基準やマニュアルを守った、守らなかった、といった話にすり替わり、その場しのぎの対応で終わってしまう。

・根本は変わってないので、しばらくすると問題が形を変えて発生する。
・それらの繰り返しになると、組織の信頼、信用が壊滅的に落ちる。


上記を考えると、
規則やマニュアルは、組織である以上、必要だと思う。
問題は「想定を超える状況になった場合」で、そうなると、
今までの慣例や習慣、それに付随する考え方、価値観はあまり使えない。
にも関わらず、過去の成功体験や、上手くいった前任者が作った、
今までの慣例に従っていると、状況の変化に対応できない。


意思を決定する人、機構の問題だろうと思う。
日本の経営者や行政の担当者、政府は、数年で代わってしまうので、
どうしても長期的な視点ではなく、短期的(数年)で考えてしまい、
その場しのぎな対応になってしまう。


基準や規則を考える時に、状況をよく吟味して、考えて作るが、
作ってから数十年も経っていると、作った人は引退していたりして、
残った人は、作った経験がないので、状況の変化に対応できないのか。
(ただ基準を守ることしか考えない)


まぁ、状況をよく吟味して、考えてたりもせず、
他の組織が基準を作ったので、うちも同じ基準を導入してやれ、
となると、もっと難しいかもしれない。



p,219で、
> 要するに、昔であれば、企業・官庁は、客観的に安全であることを確保していればよく、
> それに関わらない問題にはこだわらなくてよかったが、最近では、消費者の側、
> ステークホルダーの側の「安心」を確保することが求められる。
> 何か問題が指摘された時には、業務に関する記録が正確に記載され、保存され、
> 業務に適切に行われていることを示して説明することで、
> 理解・納得が得られなればならない。それが「安全から安心へのトレンド変化」だ。

安全というものは、戦後直後あたりだと、重要だったのかもしれない。
しかし、現在では、ほとんどの企業や官庁、団体は、安全という基準を守っている。
その中で、競合他社との差別化、さらに状況にあった安全基準を求めていると思う。
なので、普通に使う分には安全なのだけど、選ぶ消費者側からすれば「より安全」なものを選択するので、そのようなトレンドができたのではないか。



いずれにしても、名著だと思う。
社会の本質をしっかり突いているので時代の変化にも耐えると思う。
文庫で出ないかな。