「自閉の利用」
神田橋條治先生の論文「自閉の利用」をようやっと読むことができました。
以前から読みたいと思っていたのですが、なかなか機会がなく、
この度、国会図書館を利用して手に入れ読みました。
で、内容を大雑把にいうと、「拒否する力を利用し身につけること」と、
私は(今のところ)解釈した。
そして、かならずしも、患者の状況を細かく聞かないということだ。
通常、面接では、育成歴や現在の状況、周囲の人間関係などを細かく聞き、
記録しておくが、それは有害な場合もあるとしている。
本論文中に出てくる「仮説」の部分がすごい。
少しだけ引用する。
>2、仮説
>ある種の人達がいる。その人達にとって、心理的有害因子は対人関係の中にある。
>従って、対人関係を断ったり、薄くしたり、表面的なものすることが心理的安定に役立つ。
>付記
>①精神科医は心理的に近づこうとする職業であり、また「心を見透かす技術」を持ちたいと努力しているから、通常の人間より並外れて有害である。
>②「やさしい」「暖かい」「甘えられる」「尽力的な」相手は、その人が近寄る傾向をもっている故に有害であり、患者の中に近寄りたい気持ちをかきたてるが故に有害である。
>
ある種の人の場合は、「あまり心に近づくな」と言っている。
症例の中でも、「治療者が熱心に患者の話を聴き入ることが患者の秘密を減らし、患者の心をひどく不安にさせる点である(P21)」としている。
一般に、対人援助では、とにかくその人の育成歴や現在の状況といった情報を沢山獲得するすればするほど良いこととされている。しかし、それはかえってマイナスな場合もあるということ。
ブリーフセラピーでも同じ部分があるなぁと思う。
思い出したのは有名なミルトン・エリクソンのフィラデルフィアの事例。
うつ病の人に対して、育てた花を人に送るように助言したら、うつ病が治ったというもの。
病気になった原因は一切聞かず、会ったもの一回だけだった。
もし育成歴など情報を沢山収集していたら、その分時間がかかっただろうし、治療も長くかかったかもしれない。さらにそれによって、心を不安定にしたかもしれない。
(育成歴から情報ももとに、いわゆる解釈投与をして、心をいじくり回して悪化させる)
そしてその治療にも時間がかかる。
治療にかかる時間は当然ながら短い方が良いはずである。
そのためのヒントには必ずなるはず。
あまりにすごすぎるので、一回論文を読んだだけでは完全には理解できないと思う。
また、折に触れて読み直していきたい。
ちなみ、この間の複雑性PTSDのオンラインセミナーで、神田橋先生の「バリア再建」なる論文があると話があったが、現在探しています。